▪老年内科・ものわすれ外来について
少子高齢化の傾向が加速する昨今、高齢者の人口割合は年々増加傾向となっています。未曽有の高齢化社会に対して年金受給の見通しも不透明であり、ますます若々しさを保つための健康管理に皆様の関心が向いているところではないでしょうか。
中でも認知症に関しての医療体制の充実は急務であり、厚生労働省の調査によると認知症人口は2025年には700万人を超えると言われており、これは65歳の方々のうち5人に1人という計算になります。もはや他人事ではありません。
ひとえに認知症といっても有名なアルツハイマー病をはじめ、その原因となる疾患は様々であり、それぞれに有効な対応法・治療法は異なります。
認知症に進行してしまう前の軽度認知障害の状態で発見し、進行を予防するための方法を考えることも重要です。
物忘れがひどくなった、言いたいことがとっさに言えなくなったと自覚される方はぜひ一度ご相談ください。
また以下のような症状がご家族にみられる場合は、「頭の健診を受けよう」と呼びかけ、ご本人を連れて来院ください。
認知症の傾向があれば、薬物療法を含めた今後の治療方針を相談しながら決めていきましょう。
さらに
このように総合病院ならではの多職種の信頼できる、熟練したスタッフによるバックアップも充実しています。
また意外と、認知症だと思っていたのに単なる年齢的な物忘れであったということもよくあります。時には後述するてんかんや抑うつの症状が認知症と誤解されているケースもあります。
このほか、認知症のような症状があるものの、実際には脳内の病気があり、脳神経外科での治療が効果的である方もおられます。その場合は速やかに脳神経外科専門医への紹介・相談が可能です。
認知症が進行すると様々な病気を併発することとなり、その代表例として、てんかんがあります。
てんかんは小児科で診る病気だと一般的に思われていますが、実は65歳以降で発症される方が増えてきています。
65歳での発症率は1%、75歳以上となると2%といったように、年齢が高くなるごとに発症率は増え、現在日本の高齢者てんかんの有病率は30-40万人にのぼると言われています。
身の回りに発症される方がおられても全くおかしいことではありません。
ところで、てんかんと言えば急に意識消失し転倒したり、全身が反り返る・ガクガク震える動作を連想する方も多いと思います。
しかし実際には、動きが突然止まる・目の焦点が合わなくなる・手や口の妙な動きがあるといったような見過ごされがちな症状で発症することも多くみられます(図をご参照ください)。
このような現象を「意識減損焦点発作(複雑部分発作)」といいます。
最近よく報道される高齢者の運転事故原因は実は認知症だけではなく、この意識減損焦点発作であることが多いのではないかといわれています。
また意識保持焦点発作という、周囲の人は全く気付かないのに本人だけがおかしいなと感じるような場合もあります。
てんかんは不治の病と思われがちですが、特に壮年以上の方においてはおおよそ内服薬で発症予防ができます。このような兆候がご家族に見られた時には早めに受診し、ご相談ください。
また最近の抗てんかん薬は、副作用が少なく有効率が高いため、安心して長期に内服いただけます。しかし薬価が高いため医療費負担も少なくはありません。
このため医療費の自己負担が軽減される自立支援医療制度(通院治療のみに適応)もございます。該当されると思われる患者様には直接ご案内いたします。
色々な科や病院にかかっているうちに薬がやたら増えてしまって困る・・・という方もいらっしゃるかと思います。この状態をポリファーマシーといいます。
単に薬が多くて飲みづらい、飲み忘れてしまうというだけではなく、特に御高齢の方においては相互作用などで有害事象が出てしまう可能性が高く、問題があります。
この問題に対して、中心となる医師が包括的・全人的に患者様を診察することで、極力必要最小限の投薬にとどめられるよう誘導すべきですが、これは薬での全身管理を日常的に行っている総合内科医の得意とするところです。
内服薬が多くてお困りの方はぜひご相談ください。
最近の研究では、生活習慣病(高血圧・高コレステロール血症・糖尿病などです)の早期発見・適切なコントロールから認知症発症が予防できる可能性が報告されています。
また年齢の上昇により罹患率が増える悪性腫瘍の早期発見も大切です。癌が進行してしまわれた方に対しましても、お一人お一人に適切な治療・緩和ケアを選択することも老年医学のポイントと言えます。
骨粗鬆症を予防して、骨折を防ぐことも大事です。
老年医学会指導医のほか、総合内科専門医・がん治療認定医・総合健診専門医である担当医が、様々な観点から皆様の健康寿命を延ばすための手助けをさせていただきます。
診療部長兼医局長 阿座上 聖史